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お酒とご縁とその奇跡

酒飲みの口上に「御神酒の上がらぬ神はなし」という言葉がありますが、こと神事に欠かせないのがお酒です。その起源は古く、国内最古の書物である古事記に、ヤマタノオロチを退治するエピソードでお酒が登場することから、日本でも6世紀頃には既に各地で酒造りが行われてきたことが伺えます。

日本の神話において、お米は天照大御神から授かった神聖なものとして描かれ、このお米を原料として造られるのが日本のお酒、日本酒です。神事では神様に献上するお食事のことを神饌(しんせん)と呼び、お酒も米や魚、野菜、果物と並ぶ神饌の1つになります。

神饌は神様にお食事を差し上げておもてなすこと。そして、そのお下がりをいただくことを直会(なおらい)と言います。直会は神様へお供えした食べ物を、私たちがいただくことで、神様と人とが一体になるという考え方によるものですが、他にも神前結婚式で新郎新婦が行う三三九度には夫婦の契りを固めるという意味合いが込められており、お酒は飲むだけでなく、人と人の縁をつなぐと考えられてきました。

この御神縁は目に見えないものですが、お酒の誕生にも奇跡のような出会いがあったものと思われます。というのも、お酒の原料はお米なのですが、お米をお酒へ、つまりアルコールにする為にはニホンコウジカビという麹菌が重要な役割を果たします。極端にいえば葡萄を潰して放置するとワインになりますが、お米だけではアルコール発酵しないため、お酒にはならないのです。しかし、お米に麹菌を混ぜることによって麹菌がデンプンを糖に変え、酵母菌が糖をアルコールに変化させることにより、日本酒ができるのです。このことがわかったのは、日本酒が飲まれるようになって随分後のこと。

筆者は種類を問わずお酒(アルコール)が大好きなのですが、お酒は人を陽気にさせ、緊張をほぐす作用があります。暦の上では春を迎え、少しずつ暖かくなってきました。ほんの数年前までは春は花見と称した屋外宴会が、列島各地で行われ、新しい出会いがありました。昨今の感染症ウイルスの影響でおそらく以前のような花見の風景は、今年も見られないかもしれませんが、またあの頃ように世界が平和になることを願わずにはいられません。

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